循環器

交感神経抑制薬②|β遮断薬

交感神経抑制薬

α受容体やβ受容体にアンタゴニストとして作用する

循環器では
血圧低下目的でα1受容体遮断薬
心機能抑制目的でβ遮断薬
を用いる

α受容体遮断薬
●β受容体遮断薬
αβ受容体遮断薬

β受容体遮断薬

β受容体を遮断する

非選択的β受容体遮断薬は
β1・β2受容体の両方を非選択的に遮断する

選択的β1受容体遮断薬は
β1受容体を選択的に遮断する

非選択的はβ2遮断による気管支収縮に注意

β1受容体遮断作用

■心臓
 心機能抑制

■腎臓の傍糸球体細胞
 レニン分泌抑制

β2受容体遮断作用

■平滑筋
 血管平滑筋収縮
 気管支平滑筋収縮
 子宮平滑筋収縮

■肝臓の肝細胞
 グリコーゲン分解抑制

■膵臓のB細胞
 インスリン分泌抑制

■骨格筋
 振戦抑制

内因性交感神経刺激作用(ISA)

β受容体を弱いながらも刺激する作用
弱いβ刺激により心機能に対する作用が緩和にな

⚫︎カルテオロール(ミケラン)
⚫︎セリプロロール(セレクトール)
⚫︎ラベタロール(トランデート) など

膜安定化作用(MSA)

細胞膜のNa+チャネル遮断作用
細胞内外の電位変化を抑制する
刺激伝導の興奮を抑制する抗不整脈薬様作用

⚫︎プロプラノロール(インデラル)
⚫︎メトプロロール(セロケン)
⚫︎ラベタロール(トランデート) など

β遮断薬の作用機序

心臓β1受容体に対する作用

■心臓のβ1受容体遮断
 →Gsタンパク質を介するcAMPの産生抑制
 →細胞内Ca2+の濃度低下
 →心筋収縮力の低下
  刺激伝導系の興奮低下
  洞結節自動能低下による心拍数低下
  房室結節興奮伝導抑制による伝導速度低下
 →心機能抑制

腎臓β1受容体に対する作用

■腎臓のβ1受容体遮断
 →レニン分泌抑制
 →アンジオテンシンⅡ産生抑制
 →血管拡張による末梢血管抵抗低下
  アルドステロン分泌低下による体液量低下
 →血圧低下

β遮断薬の薬理作用

■降圧作用
■抗不整脈作用
■抗狭心症作用
■心不全に対する作用
■その他の使用

降圧作用

■心臓のβ1受容体遮断
 →心機能抑制
 →心筋収縮力低下心拍数低下
 →血圧低下

■腎臓のβ1受容体遮断
 →レニン分泌抑制
 →アンジオテンシンⅡ産生抑制
 →血管拡張アルドステロン分泌低下
 →血圧低下

抗不整脈作用

■心臓のβ1受容体遮断
 →心機能抑制
 →刺激伝導系の興奮低下
 →洞結節の自動能低下
  房室結節の興奮伝導低下
 →抗不整脈作用

抗狭心症作用

■心臓のβ1受容体遮断
 →心機能抑制
 →心筋収縮力低下心拍数低下
 →心筋のO2需要低下
 →抗狭心症作用

発作の予防に有効
冠攣縮性狭心症に単独投与はさける
 →β2遮断で冠動脈拡張が抑制
  冠攣縮悪化のおそれ

心不全に対する作用

■心臓のβ1受容体遮断
 →心機能抑制
 →心筋のO2需要低下
 →心臓への負荷軽減

■腎臓のβ1受容体遮断
 →レニン分泌抑制
 →血圧低下
 →心臓への負荷軽減

心筋リモデリング抑制作用も有する
心筋収縮力低下のため重症心不全には使用できない

その他の使用

本態性振戦
偏頭痛の予防
甲状腺機能亢進時の頻脈・振戦の抑制

β遮断薬の禁忌

⚫︎本剤成分に対する過敏症の既往歴

⚫︎β1遮断心機能抑制に対する禁忌
・高度の徐脈・洞不全症候群
・Ⅱ〜Ⅲ度の房室ブロック・洞房ブロック
・心原性ショック
・うっ血性心不全
・肺高血圧による右心不全
・低血圧症

⚫︎β2遮断冠動脈拡張抑制に対する禁忌
・異型狭心症
 選択性β1遮断薬は慎重投与

⚫︎β2遮断末梢血管収縮に対する禁忌
気管支喘息・気管支痙攣
 選択性β1遮断薬は慎重投与
・重度の末梢循環障害

⚫︎β2遮断子宮平滑筋収縮に対する禁忌
妊婦
 アテノロールは禁忌の記載なし

⚫︎その他
・糖尿病性ケトアシドーシス・代謝性アシドーシス
  pH低下で心筋収縮力抑制作用を増強のおそれ
・未治療の褐色細胞腫
  β遮断薬によりα作用が強まり血圧上昇のおそれ
  必要時はα遮断薬を前投与し以後も必ず併用

β遮断薬の副作用

⚫︎β1遮断心機能抑制に対する副作用
徐脈
心不全の誘発・増悪

⚫︎β2遮断気管支平滑筋収縮に対する副作用
 特に非選択性は注意
喘息様症状
呼吸困難

⚫︎中枢神経系副作用
眠気・不眠・悪夢・睡眠障害
幻覚・抑うつ
勃起障害
 脂溶性は中枢へ移行するため注意
 プロプラノロール(インデラル)
 メトプロロール(セロケン・ロプレソール)

⚫︎その他
肝機能障害など

非選択的β受容体遮断薬

β1・β2受容体の両方を非選択的に遮断する

■心臓のβ1受容体遮断
 →心機能抑制

■気管支のβ2受容体遮断
 →気管支平滑筋収縮

■骨格筋のβ2受容体遮断
 →振戦抑制

■毛様体のβ受容体遮断
 →房水産生抑制
 →眼圧低下

◯使用上の注意(共通)
⚫︎長期投与時
 定期的な心機能検査
 徐脈・低血圧に注意
 肝機能・腎機能・血液像に注意
⚫︎連用時は急に中止しないで徐々に減量
 症状悪化のおそれ
 急性心筋梗塞を起こした報告もあり
⚫︎低血糖・糖尿病・長時間の絶食時
 血糖値に注意
 頻脈など交感神経系反応の低血糖前駆症状を
 交感神経抑制作用によりマスクするおそれ
⚫︎甲状腺中毒症
 β1遮断作用により中毒症状マスクのおそれ
 急な中止で症状悪化のおそれ
 徐々に減量すること
⚫︎手術前24時間は投与しないことが望ましい
 プロプラノロール(インデラル)
 ニプラジロール(ハイパジール)
 ブフェトロール(アドビオール)
 カルテオロール(ミケラン)
 ピンドロール(カルビスケン)
⚫︎手術前48時間は投与しないことが望ましい
 ブフェトロール(ナディック)

◯適応上の注意(共通)
⚫︎β遮断薬服用中
 他剤によるアナフィラキシーが重篤になりやすい
 通常用量のADによる治療に抵抗する報告もあり

◯妊婦・授乳婦(共通)
⚫︎妊婦は禁忌
⚫︎授乳を避ける

◯服薬指導(共通)
⚫︎自己判断で中止しない
⚫︎車の運転・機械操作注意
  血圧低下でめまいのおそれ

β1β2遮断・ISA-

プロプラノロール塩酸塩
(インデラル錠・注)

MSA作用あり
脂溶性のため中枢性副作用に注意

◯適応
⚫︎高血圧症
⚫︎不整脈
⚫︎狭心症
⚫︎偏頭痛の発作予防(内服のみ)

禁忌
⚫︎長期間絶食状態
  低血糖症状を起こしやすい
  低血糖症状をマスクして発見を遅れるおそれ

◯併用禁忌
⚫︎リザトリプタン(マクサルト)
 併用薬の作用増強のおそれ
 リザトリプタンの代謝阻害の可能性
 本剤中止後24時間以内はリザトリプタン投与✖️

ニプラジロール
(ハイパジール錠・点眼)

ニトロ基があるためNOによる血管拡張作用を有する

◯適応
⚫︎高血圧症
⚫︎狭心症
⚫︎緑内障・高眼圧症(点眼)

禁忌
⚫︎PDE5阻害薬
 本剤のNOによりcGMP産生促進
 PDE5阻害によりcGMP分解抑制
 cGMP増大を介して降圧作用増強のおそれ
⚫︎リグシオアト(アダムパス)
 本剤も併用薬もcGMP産生促進
 cGMP増大を介して降圧作用増強のおそれ

ナドロール
(ナディック錠)

適応
⚫︎高血圧症
⚫︎不整脈
⚫︎狭心症

禁忌
⚫︎慢性閉塞性肺疾患

ブフェトロール塩酸塩
(アドビオール錠)

◯適応
⚫︎不整脈
⚫︎狭心症

β1β2遮断・ISA+

カルテオロール塩酸塩
(ミケラン錠・LAcap・細・点眼)

◯適応
⚫︎高血圧症(細は未承認)
⚫︎不整脈(LAcapは未承認)
⚫︎狭心症(LAcapは未承認)
⚫︎ファロー四徴症に伴うチアノーゼ発作(小細のみ)
⚫︎緑内障・高眼圧症(点眼)

ピンドロール
(カルビスケン錠)

◯適応
⚫︎高血圧症
⚫︎不整脈
⚫︎狭心症

チモロールマレイン酸塩
(チモプトール点眼 リズモン点眼)

緑内障・高眼圧症で使用される

選択的β1受容体遮断薬

β1受容体を選択的に遮断する
β2遮断による気管支への影響が少ない

■心臓のβ1受容体遮断
 →心機能抑制

◯使用上の注意(共通)
⚫︎長期投与時
 定期的な心機能検査
 徐脈・低血圧に注意
 肝機能・腎機能・血液像に注意
⚫︎連用時は急に中止しないで徐々に減量
 症状悪化のおそれ
 急性心筋梗塞を起こした報告もあり
⚫︎低血糖・糖尿病・長時間の絶食時
 血糖値に注意
 頻脈など交感神経系反応の低血糖前駆症状を
 交感神経抑制作用によりマスク
するおそれ
⚫︎甲状腺中毒症
 β1遮断作用により中毒症状マスクのおそれ
 急な中止で症状悪化のおそれ
 徐々に減量すること
⚫︎手術前24時間は投与しないことが望ましい
 メトプロロール(セロケン・ロプレソール)
⚫︎手術前48時間は投与しないことが望ましい
 アテノロール(テノーミン)
 ビソプロロール(メインテート・ビソノテープ)
 メトプロロール徐(セロケンL・ロプレソールSR)
 ベタキソロール(ケルロング)
 セリプロロール(セレクトール)

◯適応上の注意(共通)
⚫︎β遮断薬服用中
 他剤によるアナフィラキシーが重篤になりやすい
 通常用量のADによる治療に抵抗する報告もあり

◯妊婦・授乳婦(共通)
⚫︎妊婦は禁忌
 アテノロールは禁忌の記載なし
⚫︎授乳を避ける

◯服薬指導(共通)
⚫︎自己判断で中止しない
⚫︎車の運転・機械操作注意
  血圧低下でめまいのおそれ

β1遮断・ISA-

アテノロール
(テノーミン錠)

◯適応
⚫︎高血圧症
⚫︎不整脈
⚫︎狭心症

ビソプロロールフマル酸塩
(メインテート錠)

適応
⚫︎高血圧症
⚫︎不整脈
⚫︎狭心症
⚫︎慢性心不全

◯警告
⚫︎慢性心不全使用時に対する警告あり

◯禁忌
⚫︎強心薬・血管拡張薬の静注が必要な心不全
⚫︎非代償性心不全

ビソプロロール
(ビソノテープ)

◯適応
⚫︎高血圧症
⚫︎不整脈

◯禁忌
⚫︎強心薬・血管拡張薬の静注が必要な心不全
⚫︎非代償性心不全

使用上の注意
⚫︎テープ剤による皮膚症状を起こすおそれ
 貼付部位を毎回変更すること

メトプロロール酒石酸塩
(セロケン錠・L錠)
(ロプレソール錠・SR錠)

MSA作用あり
脂溶性のため中枢性副作用に注意

◯適応
⚫︎高血圧症
⚫︎不整脈(徐放錠は未承認)
⚫︎狭心症(徐放錠は未承認)

ベタキソロール塩酸塩
(ケルロング錠)

適応
⚫︎高血圧症
⚫︎狭心症

ランジオロール塩酸塩
(オノアクト注)

短時間作用型で手術時の上室性不整脈の緊急処置に使用される

β1遮断・ISA+

セリプロロール塩酸塩
(セレクトール錠)

◯適応
⚫︎高血圧症
⚫︎狭心症

エスモロール塩酸塩
(ブレビブロック注)

短時間作用型で手術時の上室性不整脈の緊急処置に使用される

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