循環器

RAA系阻害薬②|概要

RAA系阻害薬

RAA系を阻害
アンジオテンシンⅡの産生や作用を抑制する
高血圧症や心不全に使用される

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)
アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)
レニン阻害薬

RAA系阻害薬①|RAA系についてのまとめ レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系) 血液循環調節機構 血圧低下に反応して腎臓からレニン分泌血中でアンジ...

レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(RAA系)について確認したい場合はRAA系阻害薬①を参考にして下さい。

RAA系阻害薬の作用機序

アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)

ACEを阻害
アンジオテンシンⅡの産生を抑制

◆血漿レニン活性上昇
◆アンジオテンシンⅡ濃度低下
◆アルドステロン濃度低下
◆ブラジキニン分解も抑制するため
 ブラジキニン増加

アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)

AT1受容体を遮断
アルドステロンの産生を抑制

◆血漿レニン活性上昇
◆アンジオテンシンⅡ濃度上昇
◆アルドステロン濃度低下

レニン阻害薬

レニンを直接的に阻害
アンジオテンシンⅠ・Ⅱの産生を抑制

◆血漿レニン活性低下
◆アンジオテンシンⅡ濃度低下
◆アルドステロン濃度低下

RAA系阻害薬の薬理作用

■降圧作用
■前負荷・後負荷軽減作用
■心臓・腎臓の臓器保護作用

降圧作用

◻︎レニン阻害
◻︎アンジオテンシンⅡ産生抑制
◻︎アンジオテンシンⅡ受容体拮抗
  ↓
◻︎血管収縮抑制
 末梢血管抵抗低下
◻︎アルドステロン分泌抑制
 Na+や水の再吸収抑制
 体液量低下
 ↓
◻︎血圧低下

前負荷軽減作用

◻︎レニン阻害
◻︎アンジオテンシンⅡ産生抑制
◻︎アンジオテンシンⅡ受容体拮抗
 ↓
◻︎アルドステロン分泌抑制
 Na+や水の再吸収抑制
 体液量低下
  ↓
◻︎静脈還流量低下
  ↓
◻︎前負荷軽減

後負荷軽減作用

◻︎レニン阻害
◻︎アンジオテンシンⅡ産生抑制
◻︎アンジオテンシンⅡ受容体拮抗
  ↓
◻︎血管収縮抑制
◻︎アルドステロン分泌抑制
  ↓
◻︎血圧低下
  ↓
◻︎後負荷軽減

臓器保護作用

組織アンジオテンシン産生系の抑制

◻︎レニン阻害
◻︎アンジオテンシンⅡ産生抑制
◻︎アンジオテンシンⅡ受容体拮抗
  ↓
◻︎組織の炎症部位における
 アンジオテンシンⅡの臓器障害を抑制
  ↓
◻︎組織の血管肥厚を抑制
◻︎心臓の心筋肥大を抑制
  ↓
◻︎臓器保護作用

腎保護作用

◻︎レニン阻害
◻︎アンジオテンシンⅡ産生抑制
◻︎アンジオテンシンⅡ受容体拮抗
  ↓
◻︎アンジオテンシンⅡによる
 腎臓の輸出細動脈収縮を抑制
  ↓
◻︎糸球体内圧の低下
  ↓
◻︎腎への負担軽減
◻︎尿蛋白の改善

※糸球体濾過量は低下する
 一過性な血清Cr上昇がみられることがある
※腎動脈狭窄や腎血流量低下時
 アンジオテンシンⅡで糸球体内圧が維持される
 輸出細動脈の収縮抑制で虚血性の変化のおそれ
 急激な腎機能の悪化を考慮すること

RAA系阻害薬の副作用

⚫︎血管浮腫
 発作的な皮膚の限局的腫脹
・口腔内・咽頭・喉頭に発症した場合
 口唇・舌・口腔粘膜の違和感
 咽頭や喉頭の閉塞感
 呼吸困難・嗄声・構音障害
・腸管粘膜に発症した場合
 食欲不振・嘔気・嘔吐・腹痛・下痢

⚫︎高K血症
 アンジオテンシンⅡ産生抑制
 アンジオテンシンⅡ受容体拮抗
 →副腎皮質球状層からアルドステロン分泌抑制
 →腎でのNa+再吸収・K+排泄抑制
 →血中にKが蓄積し血清K値上昇

⚫︎空咳
 ACE阻害薬のブラジキニン増加による副作用
 ACEはキニン分解酵素のキニナーゼIIと同一酵素
 ACE阻害薬によりキニナーゼII阻害
  →ブラジキニンの不活化を抑制
  →血中ブラジキニン上昇
   ブラジキニンの気道刺激により空咳が発症

カリクレイン-キニン系

キニンを生成する反応経路

□キニノーゲン
  ↓   血漿カリクレインが作用
 ブラジキニン
  ↓   ACE(キニナーゼⅡ)
 不活化

□キニノーゲン
  ↓   組織カリクレインが作用
 カリジン
  ↓   アミノペプチダーゼ
 ブラジキニン
  ↓   ACE(キニナーゼⅡ)
 不活化

キニン

血管拡張作用のある生理活性物質
◆ブラジキニンやカリジン等のポリペプチドの総称
◆キニノーゲンにカリクレインが作用することで生成する

キニノーゲン

キニンの前駆蛋白質
◆カリクレインの作用でキニンになる

ブラジキニン

血管拡張作用のある生理活性物質
炎症やアレルギーに関与する

◆キニノーゲンから生成される
◆ACE(キニナーゼⅡ)により不活化される

■血管拡張・血圧低下
■血管透過性亢進・炎症惹起
■神経終末への作用で痛覚誘発(発痛物質)
■気管支・腸管・子宮の平滑筋収縮
■腎臓でのNa+再吸収抑制・利尿

□血管内皮細胞のB2受容体結合
  ↓
 血管内皮細胞でのNO産生促進
  ↓
 産生したNOが血管平滑筋に作用
  ↓
 血管平滑筋弛緩
 血管拡張

カリクレイン

キニノーゲンに作用するタンパク質分解酵素

血漿カリクレイン

■キニノーゲンに作用
 直接ブラジキニンを生成

組織性カリクレイン

◆膵や腎など種々の組織に見出される

■組織性カリクレインがキニノーゲンに作用
 カリジンを生成
■血漿中のアミノペプチダーゼがカリジンに作用
 ブラジキニンを生成

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