自律神経

交感神経|交感神経興奮薬②間接型・混合型

交感神経興奮薬

交感神経系の作用を促進する薬

直接型
 直接アドレナリン受容体に作用する
 受容体を刺激・活性化し細胞内反応を促進する

◆間接型
 交感神経終末に作用する
 シナプス間隙の内因性NAを増加
 間接的に細胞内反応を促進する

◆混合型
 直接型と間接型の両方の作用機序をもつ

間接型交感神経興奮薬

交感神経終末に作用する
シナプス間隙の内因性NAを増加
間接的に細胞内反応を促進する

●アンフェタミン
●メタンフェタミン

●アメジニウム
●チラミン

アンフェタミン・メタンフェタミン

シナプス間隙のNA増加作用をもつ

◆末梢交感神経終末だけでなく中枢神経にも作用
◆大脳皮質興奮作用をもつため覚醒剤に分類される
◆実際に治療目的で使用されることは少ない

末梢の交感神経シナプス間隙のNA増加
 交感神経終末からのNA遊離促進
 交感神経終末へのNA再取込阻害
 MAO阻害による神経終末でのNA分解抑制
  →α1刺激による血圧上昇
   β1刺激による心機能亢進

中枢のノルアドレナリン作動性神経終末に作用
 中枢のドパミン作動性神経終末に作用
  →中枢神経興奮作用

タキフィラキシーを生じる
 短時間反復投与で薬物の効果が低下する現象
 シナプス前ニューロンの貯蔵物質が枯渇
 シナプス伝達が低下する

●アンフェタミン/フェニルアミノプロパン
 覚醒剤に指定
 日本では医薬品としての承認はない

●メタンフェタミン/フェニルメチルアミノプロパン
 (ヒロポン錠)
 アンフェタミンのメチル誘導体
 覚醒剤に指定
 医薬品としては許可のある医師のみ施用可能
◯適応
・ナルコレプシー
 昏睡・嗜眠・もうろう状態
 インスリンショック
 うつ病・うつ状態
 統合失調症の遅鈍症の改善
・手術中・手術後の虚脱状態からの回復促進
 麻酔からの覚醒促進
・麻酔剤の急性中毒の改善
 睡眠剤の急性中毒の改善

アメジニウム

シナプス間隙のNA増加作用をもつ

◆交感神経機能を亢進させ血圧上昇を目的に使用
◆末梢交感神経終末に作用
◆中枢神経系への移行は極めて低い

交感神経シナプス間隙のNA増加
 MAO阻害による神経終末でのNA分解抑制
 交感神経終末へのNA再取込阻害
  →交感神経作用が亢進
  →血圧上昇

●アメジニウムメチル硫酸塩
 (リズミック錠)
◯適応
・本態性低血圧
・起立性低血圧
・透析施行時の血圧低下の改善

チラミン

◆様々な食品に含有される食餌性アミン
◆交感神経終末にてNA分泌促進作用をもつ
◆チラミンを多く含む食品
 チーズ・赤ワインなどの発酵食品
 チョコレート・ココアなどのカカオ製品
 にしん・レバーなど

■モノアミントランスポーターにより
 交感神経終末に取り込まれる
 →NAの分泌促進
 →交感神経機能亢進

通常のチラミン摂取
 腸管・肝臓のMAOにより分解される
 NA分泌促進作用は現れない

MAO阻害薬服用中のチラミン摂取
 交感神経終末に取り込まれたチラミンは、
 MAOにより分解されず神経終末に残る
 →NA分泌促進により交感神経機能亢進
 →高血圧発作のおそれ

混合型交感神経興奮薬

直接型と間接型の両方の作用機序をもつ

●エフェドリン
●メチルエフェドリン

●ドパミン
●ドカルパミン

エフェドリン・メチルエフェドリン

β受容体刺激作用とNA分泌促進作用をもつ

◆エフェドリンは
 麻黄に含まれるアルカロイド
◆メチルエフェドリンは
 エフェドリンのアミノ基にメチル基が入った誘導体
◆生体膜透過性が高くCOMTやMAOで分解されない
 →経口投与が可能・作用持続時間が長い
血液脳関門を通過する
 →中枢興奮作用も示す

■直接作用
β1受容体刺激
 心機能亢進作用
 心筋β1による心収縮力上昇
 洞結節β1による心拍数増加
β2受容体刺激
 平滑筋弛緩作用
 気管支平滑筋弛緩

■間接作用
交感神経終末からのNA遊離促進
 α1受容体刺激
 →血管平滑筋収縮
 →血圧上昇・充血改善
タキフィラキシーを生じる
 短時間反復投与で薬物の効果が低下する現象
 シナプス前ニューロンの貯蔵物質が枯渇
 シナプス伝達が低下する

■中枢作用
 中枢興奮作用
 中枢性鎮咳作用

●エフェドリン塩酸塩
 (エフェドリン錠・注)
◯適応
・気管支喘息・喘息性気管支炎・感冒
 急性気管支炎・慢性気管支炎
 肺結核・上気道炎(咽喉頭炎・鼻カタル)
・鼻粘膜充血・鼻粘膜腫脹
・麻酔時の血圧降下(注のみ)

●dl-メチルエフェドリン塩酸塩
 (メチエフ散・注)
◯適応
・気管支喘息・感冒・急性気管支炎・慢性気管支炎
 肺結核・上気道炎(咽喉頭炎・鼻カタル)
・蕁麻疹・湿疹

ドパミン・ドカルパミン

アドレナリンα1・β1受容体刺激作用
ドパミンD1受容体刺激作用
ノルアドレナリン分泌促進作用

ドパミン
 カテコールアミン
 中枢神経系の神経伝達物質
 作用持続時間短い・経口投与無効
 持続点滴静注にて投与する

ドカルパミン
 非カテコールアミン
 ドパミンのプロドラッグ
 経口投与で持続的効果を示す
 ドパミン注やドブタミン注から内服へ
 早期離脱を必要とする場合に用いる

■直接作用
 末梢組織での
 アドレナリンα1・β1受容体刺激
 ドパミンD1受容体刺激作用

■間接作用
 大量で交感神経終末からのNAd遊離促進

■用量によって異なる作用を示す
低用量
 D1受容体刺激
 腎臓・腸管膜・冠動脈の血管拡張
 →血流増加
  腎血流増加による利尿作用
中用量
 β1受容体刺激
 心機能亢進
 →心筋β1による心収縮力上昇
  洞結節β1による心拍数増加
高用量
 α1受容体刺激
 血管平滑筋収縮
 →血圧上昇

ドパミン製剤の中枢作用

◆ドパミンは血液脳関門BBBを通過しない
 薬剤投与では中枢神経系への作用はない
 (中枢神経系の神経伝達物質は内因性ドパミン)

◆中枢神経系のへのドパミン作用を目的とする場合
 BBBを通過する前駆体であるレボドパを使用する

●ドパミン塩酸塩
 (イノバン注)
◯適応
・急性循環不全(心原性ショック・出血性ショック)

●ドカルパミン
 (タナドーパ顆粒)
◯適応
・ドパミン注・ドブタミン注から離脱困難な循環不全
・経口剤への早期離脱を必要とする場合

参考書籍

ポケット医薬品集

ポケット医薬品集 2023年版
添付文書情報だけでなく細かい+αも確認できる医薬品集。調剤にも服薬指導にも役に立つおすすめ書籍です。

薬がみえるシリーズ

薬がみえる vol.1
病態と薬物療法をつなげて知識をつけることができます。現場で働く薬剤師にも、薬剤師を目指す薬学生にもおすすめの書籍です。