過敏症疾患

副作用|血管浮腫

血管浮腫

血管神経性浮腫
真皮下層から皮下組織に限局的に生じる蕁麻疹

◆主な初期症状
 顔面・口唇・舌・咽頭の浮腫
 咽頭浮腫による嚥下困難・呼吸困難

◆主な原因医薬品
 ACE阻害薬
 ARB

◆服薬指導
次のような症状がみられた場合は速やかに受診
 急に唇・瞼・舌・口の中・顔・首が大きく腫れる
 喉のつまり
 話しづらい
 息苦しい
息苦しい場合
 急激に呼吸困難におちいるおそれ
 救急車を利用して直ちに受診

概要

発作性の皮膚や粘膜の限局的深部浮腫
突然出現し一定時間後には消退する

数分から数時間で急に浮腫がおこる
紅斑や掻痒感はない
通常1〜3日で、数日たつと消退する

口唇・眼瞼・顔面・頸部に好発
 口腔・咽頭喉頭・気道・消化管にも発症する
◇口腔内・咽頭・喉頭に発症した場合
 喉頭浮腫から気道狭窄・閉塞のおそれ
 救急車を利用して直ちに受診
◇腸管粘膜に発症した場合
 急性腹症として外科処置を要することもある

蕁麻疹と血管浮腫

◆蕁麻疹とは
 ケミカルメディエーターによる皮膚症状
◆血管拡張による紅斑
 血漿成分漏出による膨疹
◆血管浮腫は皮膚深部に起こる蕁麻疹

蕁麻疹
⚫︎真皮上層
⚫︎境界明瞭・円形または地図状
⚫︎数十分から数時間で消退
⚫︎掻痒感あり

血管浮腫
⚫︎真皮下層〜皮下組織
⚫︎境界不明瞭・大きさは様々
⚫︎2〜3日で消退
⚫︎掻痒感なし
 (あっても軽度)

原因医薬品

ACE阻害薬
ARB
NSAIDs
 (アスピリンなど)
抗菌薬
 (ペニシリン・βラクタム系・キノロン系など)
経口避妊薬
 (ピル・エストロゲン)
線溶系酵素
 (アルテプラーゼ)
TNF-α阻害薬
 (インフリキシマブ)

●カルシウム拮抗薬
●DPP-4 阻害薬
●オピオイド
●筋弛緩薬
●造影剤
 など

症状

◆発作的な皮膚の限局的腫脹
 口唇・眼瞼・顔・首・舌に多い

◆口腔内・咽頭・喉頭に発症した場合
 口唇・舌・口腔粘膜の違和感
 咽頭や喉頭の閉塞感
 呼吸困難・嗄声・構音障害

◆腸管粘膜に発症した場合
 食欲不振・嘔気・嘔吐・腹痛・下痢

好発時期

◆副作用の好発時期は医薬品によって異なる
◆最短では服用1時間後、
 最長では10 年以上のこともある

●ACE阻害薬
 投与開始後1週間以内に発症することが多い
●NSAIDs
 数分から6時間程度以内に発症する

リスク因子

◆血管浮腫の既往

特に遺伝性血管性浮腫や後天性のC1-INH欠損症ではACE阻害薬やエストロゲンの服用によって発作が誘発されることがあるため注意

発生機序

◆副作用の発生機序は医薬品によって異なる

●ACE阻害薬
 ACEによって分解されるブラジキニンの分解を抑制
 ブラジキニンの作用が遷延・増強
 血管性透過性亢進により血管性浮腫が発症

●NSAIDs
 アラキドン酸代謝物のロイコトリエンの産生亢進
 血管拡張・浮腫が生じると考えられている

●抗菌薬
 IgEを介するⅠ型アレルギーによることが多い

●線溶系薬剤・経口避妊薬・DPP-4 阻害薬
 ブラジキニンが関与

●造影剤・筋弛緩薬
 マスト細胞を直接刺激しヒスタミンを遊離

治療方法

◆原因医薬品の投薬中止
 原因薬の中止で約3日以内に改善が期待できる

◆喉頭浮腫による気道閉塞の確認
 口腔・咽頭・喉頭の腫脹の自覚症状の有無
 必要に応じて気道確保
 気道閉塞が疑われた場合は直ちに入院
 ・副腎皮質ホルモンの静脈投与
 ・アドレナリンの皮下注・筋注・静注
 ・気管内挿管や気管切開

◆軽症
 抗ヒスタミン薬の内服・静注
◆重症
 副腎皮質ホルモンの静注

◆C1-INH補充療法
 ACE阻害薬やエストロゲン投与時の
 遺伝性血管性浮腫や後天性C1-INH欠損症の合併
 補体系の異常についての精査
 必要に応じてC1-INH 補充療法を行う

◆イカチバント投与検討
 ACEとDPP4はブラジキンを不活性化する酵素
 ACE阻害薬やDPP4阻害薬による血管性浮腫に対し
 理論的にイカチバントの効果を期待する
 現時点では十分なエビデンスはない

イカチバント酢酸塩(フィラジル皮下注)

◆遺伝性血管性浮腫の急性発作薬
◆ブラジキニンB2受容体拮抗作用
◆ブラジキニンによる血管拡張・透過性亢進を阻害

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